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篠原コラム「あなたは、ITプロデューサーになれますか?」

前回「IT業界には、なぜ法律がないのか?」というコラムを書き、多くの方々から貴重なコメントをいただき大変参考になりました。ありがとうございます。

 さて、今回は「ITプロデューサー」についてお話をしたいと思います。

 皆さんは「ITプロデューサー」という名称を、ご存知ですか?

 もし、ご存知であれば「ITプロデューサー」とは、どのような仕事をする人で、どのような能力(スキル)を持った人か理解していますか?

 「ITプロデューサー」本人でもなければ自信を持って答えられる人は少ないのでないでしょうか?

 過日、わたしが毎月開催しております「ヒューマンスキルアップセミナー」で参加者に同じ質問をいたしましたが、9割以上の方が知りませんでした。

 実は「ITプロデューサー」という名称は、数年前から使われておりますが、明確な「定義」や「条件」はありません。自社内の経営層と事業部門とIT部門の三者を結びつける役割を担う実務者であるとか、IT戦略やIT投資計画の企画立案を行い、業務改革・業務の効率化などから経営の収益拡大に貢献するIT企画関連業務を行う人であるとか……。このようなことができる人というと、額面どおり受け取ればかなりのスーパーマンを想像しますが……実際、何人いるのでしょうか?

 反面、いろいろな技能を持った中小企業や個人が集まり組織化して仕事を行うとき、その核となる人が自らを「ITプロデューサー」と称したり、中にはコンサルタントでもなければプロジェクトマネージャでもなく、なんとなく 「ITプロデューサー」と勝手に名乗るケースなどもあります。

 世間一般に言う“プロデューサー”について、どのような説明がなされているのか調べてみました。

 いろいろな「定義(説明)」が見つかりましたが要約すると、下記のとおりです。

 『プロデューサーとは、映画やテレビ番組などの映像作品、ポスターや看板などの広告作品、音楽作品、テレビゲーム作品制作(製作)など制作活動の予算調達や管理、スタッフの人事などを司り、制作全体を統括する職務。ディレクターよりも広範囲な権限を有し、制作物の商業的な成否について責任をもつ者のことをいう』

 ついでに「***プロデューサー」と呼ばれる人(職種)は、どのくらいあるのか調べたところ……

 『テレビプロデューサー、映画プロデューサー、音楽プロデューサー、アシスタント・プロデューサー、チーフプロデューサー、アソシエイトプロデューサー、ゼネラルプロデューサー、コ-プロデューサー、制作プロデューサー、ラインプロデューサー、エグゼクティブプロデューサー、アニメーションプロデューサー、デザインプロデューサー、空間プロデューサー、出版プロデューサー、ビジネスプロデューサー、ブランディングプロデューサーetc.』

 ……あまりに多いので、途中でやめました。

 テレビ、映画、音楽などのプロデューサー以外、どのような仕事をする人か分からないのではないでしょうか? 少なくとも、わたしはよく分かりません!

 この現実を考えても、「ITプロデューサー」がIT業界において市民権を得ないのは当然かもしれません。

 わたしが、今回改めて「ITプロデューサー」をテーマにコラムを書いたのは、ITエンジニアのキャリアパスはプログラマ→システムエンジニア→プロジェクトリーダー→プロジェクトマネージャ→ITコンサルタント、 ITコーディネーター……というような単純なものではない! と思うからです。

 もっと心配していることは、ITエンジニアの仕事の多くは「言われたことを」「限られた範囲で」「僅かな自己主張を生きがいに」でしか、自らの技術力を発揮できないことです。もちろん、自由に自らの技術力で自己主張しているエンジニアもいるとは思いますが、知る限りでは少数派です。

 わずかな自己主張しかできない職業(立場)は、結果として道具となり部品扱いされて、使い捨てにされる危険がつきまといます。この業界には今でも人間として1人ひとりいろいろな可能性を秘めたエンジニア達を、PGとか、SEとか、PMとかで人格まで決めつけるような考え方が当たり前のようにあるという現実と愚かさがあります。

 いかにコンピュータを扱う人種が集まった業界でも、人間の多様性が欠落した文化はいただけません。映画やテレビのプロデューサーの如く、役者(技術者)の経験や演技力だけでなく個性や性格まで見抜き適材適所の人を配置して全体(プロジェクト)の構成を考える才能・責任をもった人材をIT業界でも「育て」、「見つけ」なくてはならないと常日頃から思っています。

 わたしが考える「ITプロデューサー」とは、下記の能力を備えた人です。

(1)自ら、仕事を引き出し、創り出す力を持つ。

 頭はクール(論理的思考)で、心がホット(人が大好き)で交渉ごとが三度の飯より好きで、志(人生で実現したいこと)を明確に持ったポジティブな人。

(2)自ら、業務に適材な人材を手配できる。

 人を恐れず、人を侮らず、人を先入観で判断せず、多様な人材を常に把握し、ミスキャストのない人材配置ができる人。

(3)自ら、プロジェクトを管理し成果物の品質・納期を保全できる。

 実現すべきことを明確にイメージでき、そこから現状との課題を見出し、先々の対処ができる人。 

 高いハードルかもしれない。しかしわたしの周りには「ITプロデューサー」の称号を与えたい人は複数名います。100点満点の「ITプロデューサー」などはいませんが、「育てる」→「作り出す」ことであると思っています。IT業界には、もっとたくさんの“ロールモデル”が必要です。

 わたしが感心(感激)した、あるプロジェクト責任者(Aさん)のお話をします。

 ある日、わたしのところにAさんから電話をいただきました。

 「現プロジェクトが土壇場で仕様変更があったが客からは納期はキープしていただきたい、と言われ、現場は深夜残業や休出でしのいでいる。しかし、納期が厳しいので適材の人材(エンジニア)を1人お願いできないか?」との内容でした。

 運良く、技術的にピッタリのエンジニアがいましたが、少々口が重いので、念のため経験は少ないが明るくて軽いフットワークが売りの若手と2人を連れてAさんに会いに行きました。

 Aさんは2人と1時間くらい話したあと部屋から出てきて、わたしに「若手の方を使いたい」と言いました。

 ……Aさんの心が読めれば、あなたも「ITプロデューサー」の資質があるとおもいます。

 なお、そのプロジェクトは、納期通りに納めたそうです(若手が参加したからではないでしょうが)。

 「ITプロデューサー」の組織化を計り、夢を失いつつあるIT業界のエンジニアに目指すべきモデルの1つとして「ITプロデューサー」という目標をつくり、若き人材が憧れ育つ環境を築きたいと願っています。

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