“IT”をインフォメーション・テクノロジーだから“情報技術”と捉え、「技術的」発想から社会への利用・貢献を考えるのは、IT業界のわたしたち技術者だけだ。これだけIT技術(製品・サービスなど)が社会の隅々まで行き渡り、多くの人が日常的に電気のスイッチを入れるように使うIT技術は、技術ではなく生活の一部で「当たり前」になっている。
釈迦に説法だが、IT技術は、飛行機を飛ばし、電車を走らせ、生命維持装置をつかさどり、etc……ありとあらゆる所に使われている。
もし、飛行機の? もし、電車の? もし、生命維持装置の……システムがトラブルを起こしたならば経済的損失の大きさは計り知れない。ましてや、人の命を奪うようなことが起きたら?(実際、起きてます!)
なのに、IT業界には「法律」がない! なぜ?
IT業界と、よく比較される建築業界には、ご存知の通り下記のような法律がある。
=建築基準法の規定項目=(参考)
第1章 総則
第2章 建築物の敷地、構造及び建築設備
第3章 都市計画区域等における建築物の敷地、構造、建築設備及び用途
第3章の2 型式適合認定等
第4章 建設協定
第4章の2 指定資格検定機関等
第4章の3 建築基準適合判定資格者の登録
第5章 建築審査会
第6章 雑 則
第7章 罰 則
今でも記憶されている人も多くいると思うが、マンション建設許可に必要な耐震強度を偽装して人が住めないマンションを作り販売した“事件”があった。
あの時、耐震強度を偽装した一級建築士が毎日のようにテレビ画面をにぎわし、最後は国会まで引っ張り出され喚問を受けたが、責任ある立場を考えると当然であると思った。
IT業界で、社会的に大きな影響を与えるネットワーク障害や交通機関を混乱に巻きもむシステムトラブル等の“事件(事故)”が起きたとき、IT技術を多少知るわたしたちは、即座に「あっ、プログラムのバグだなぁ?」とか「チェック漏れだなぁ?」とか思い当たり、「これは、担当者は大変だ」と勝手に心配するのは、わたしだけではないと思う。
しかし、テレビ画面に出てきて頭を下げて謝ったり、報道記者から鋭い突っ込みを入れられあたふたしているのは、いつも「○△会社の社長」であったり、「○×銀行の頭取」である。その後、一切モノをつくった責任者(技術者含め)の顔が出てこない……これで、いいの?
確かに、納められた製品やシステムは納めた企業が責任を担うのは当然かもしれないが、社会に多大な迷惑や損害を引き起こした原因について身をもって感じることがなければ「責任感」など育つはずがない。
もちろん、すべての技術者が、とは言わないが製品やシステムの最終リリースを判断した責任者、主要部の設計者、プログラミングの責任者、テストの責任者などは、自からの判断について“強い”責任を意識しなくてはいけない環境(制度)が必要である。
このような環境がなければ、IT業界は真のプロフェッショナルを育てるステージを失い、時代と共に消えてゆく「やりがい」のない職業となり、若者達は今以上にソッポを向いてしまうだろう。
では、どのような制度(法制度)が必要なのか?
建築基準法のような法律はいま無理なので、わたしは少なくとも納品ドキュメントに責任者(技術者)の氏名を記載することを制度化させたい。責任は重くなるが“責任=報酬”であるから当然責任に見合った報酬も社会に認めさせたい(例えば、一級技術者レベルは通常年収3000万円前後だ、というように)。
現在、弊社も加入し事務局の運営業務もさせて頂いている「全国ソフトウェア協同組合連合会(JASPA)」では、建築基準法を参考にしながら公的規制として「ソフトウェア業基準法(仮称)」を制定し、業界内で運用することを国に提案する準備を進めているので、内容の一部を紹介する。
……この基準法は、共通フレームに準じた各プロセスで必ず作成すべきドキュメント(資料)を規定し、これらのドキュメントの作成(/変更)においては、作成日付、作成者役職、作成者氏名、作成者所属、変更履歴、監修責任者氏名を必ず記述することとし、さらに、これらの資料は作成者の所属場所において、関係者が必要において閲覧できるような形で保管することを規定(義務化)するものである(中略)。
わたしも、この「ソフトウェア業基準法(仮称)」が、1日も早く施行されることを願い微力ながら応援している1人である。現実に、時代を支え、社会に対し、多大なる貢献している多くのIT技術者の顔がもっと見える環境を創ることは、ひとえにIT技術者の社会的地位の向上につながることを願って戦っている。
以上。
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